top of page

『星屑のリヴラガーデン』デザイナーズノート:瀧里フユ

はじめに


 デザイナーズノートとは、いわば「拡大版あとがき」です。
 ここから先には、追加データや追加ルールのようなものはいっさい掲載されていません!

 この文章は「『星屑のリヴラガーデン』を書く時、瀧里はどんなこと考えてたの?」「どういう意図でこのルールはつくられたんだろう!」といったことに興味がある方に向けた、瀧里からのとっても長いあとがきなのです。
 それでは、瀧里のひとり語りに興味のある方と、自分でロールプレイングゲームを作ってみたいという未来の同志たる皆さまは続きをどうぞ。

 ――ようこそ、終わりに抗う世界へ!

追加ルール
 

▼デュエット形式


 ステラナイツをふたりで遊びたい!
 ――というご意見はずっといただいておりまして。
 もちろん瀧里も、潮さんも、どうにかふたりで遊べるようにできないかと模索し続けていました。

 そこでひとまず、同人誌として「ふたりだけで戦う世界設定」を持つワールドセッティングを作ってみようということになりました。
 それが『灰壁のフォートヴラッド』で、強大な力を持ちつつそれを振るえない存在と、その力を受けて戦う騎士の物語が誕生しました。

 もっと元を辿れば2017年『不夜城のアキレギア』という同人システムが原型になっているのですが、ここでは割愛しましょう。

 
 ――割愛しなくていい? もっと聞きたい?

 『不夜城のアキレギア』も、ふたりで遊ぶロールプレイングゲームでした。
 瀧里はその中で、システムのギミック部分を担当しており、

・守るべき存在が、一緒に戦場に立っている
・あなたが判断を間違えれば、その存在は壊れてしまう

 という、デュエット形式にも受け継がれたコア部分を開発したりしていました。
 これはとても優れたギミックで(自分で言うと恥ずかしい)、ふたりしかいないのに戦略性が生まれ、同時にロールプレイも捗るという、ぴったり噛み合ったルールとなったのです。

 ただ、ステラナイツを単純にふたりで遊ぶルールに置き換えるのは、とてもむずかしいことでした。
 アキレギアの方式をただ組み込んだだけでは、世界設定や、システムを遊んだ時の感覚が変わってしまうのです。

 もともと多人数用のシステムを少人数で遊ぶと、ルールが破綻したり、単調になったりするもの。
 何しろそのルールは「多人数(3人とか4人とかシステムによる)で遊ぶと一番楽しくなるようにチューニングされている」ものだからですね。

 ですから、ルールだけを変えるのではなく、世界設定を拡張しようという流れに、自然と進んでいったのでした。

 そも、ルールと世界設定は一体のもので、世界設定を再現するためにルールがあり、ルールを回すだけで世界が卓上に再現されるのがロールプレイングゲームの醍醐味というのが、瀧里と潮さんの考えです。
 ルールだけ変えたり、世界設定だけ変えたりしたら、絶対に齟齬が出てしまいます。

 
 つまりは――
 
 トワイライトというエネミーが生まれたのは、あらゆる意味において、必然だったということです。

 皆さんも、ルールを追加したり変えたりする時には、そのルールに相応しい世界設定を同時に描くことをオススメいたします。
 世界作るの楽しいしね!

▼フラワースタンド


 どうしてパートナーにブーケが投げられないんですか!?
 瀧里のもとに届く、メールに手紙にリプにDMにマシュマロ!!

 わかってるよぉぉぉっ!
 瀧里だってわかってるんだよぉぉぉっ!!
 
 でも、どうしてもパートナーにブーケを投げてはいけない理由があったのです。
 人はふたつのことを、同時に行うことはできません。
 できる人もいるけれど、できない人の方が多いのです。

 ロールプレイをしながら手を動かすというのは、セリフを語りながら身振り手振りの演技をする役者にも匹敵する、とても難易度の高い行いです。

 できる人は! すごいから! 誇ってね!!
 
 そういうわけで、ロールプレイに集中してもらうために、あえてパートナーにブーケを投げることを非推奨としたのでした。
 
 ――でも、ふたり専用なら?
 
 時間をめちゃくちゃ贅沢に使える上に、ふたりしかいないから、他の参加者さんの時間を奪っちゃうこともない! 好きな物語をやっていい! どれだけ丁寧に描いても大丈夫!
 それなら、ロールプレイしながらパートナーに花束を届ける――つまりフラワースタンドを贈る余裕も生まれると判断しました。

 おまたせしました。
 これからは、パートナーにフラワースタンドを贈れます!!

ワールドセッティング


▼墜星のナヴィガトリア


 ナヴィガトリアは、実はかなり前から決まっていた設定でした。
 どれくらい前かと言うと……ぼんやりとは最初に同人誌を出した時から、具体的には『朱の孤塔のエアゲトラム』という作品を出した頃には、もう形になっていました。

 ただ、3巻でナヴィガトリアをやっちゃうと、完結したっぽさが出てしまうのでは? という懸念もありました。
 ステラナイツはまだまだ続くのに、これで終わっちゃうの!? と心配をさせてしまうのではないかと……。
 
 それでも、アーセルトレイの未来を描くのは、それがIFの未来のひとつという形であっても、避けては通れないでもありました。
 ロアテラとの決戦が大前提にある世界設定で、その決戦のはじまりがどうなるのかを描かない選択肢はないのですから。
 だから、あとがきでも書いていますが、大切なことをお伝えしますね。

 『銀剣のステラナイツ』は、まだまだ続きます!

 ――もちろん、前哨戦ではない本当の最終決戦も、その後の世界の物語も、既にたっぷりとプロットが用意されています!

▼紫弾のオルトリヴート


 オルトリヴートは商業じゃ無理ですよねー。
 無理ですねー。
 
 そんなやり取りを担当さんとした、懐かしい記憶が蘇ります。
 そして「パートナーにブーケが投げられない問題」と同じか、それ以上にメールやお手紙をいただいたのが「オルトリヴートを2巻とか3巻とかに入れて!」というものでした。

 そして、その声があまりに多く、熱意にあふれていて、どうしてもフラグメントバレットを撃ちたい都市捜査官さんたちの声援があって――
 
 ようやく、第3巻にオルトリヴートを収録することができました。

 ――いったい何の話をしているんだ?
 そう思った方に説明しますと、『紫弾のオルトリヴート』は、もともと同人誌で発表していたワールドセッティングだったのです。
 
 潮さん主導で、ステラナイツ1巻と並行して企画が進んでいたオルトリヴートは、「バディサスペンス&アクション」という謳い文句で、2018年に送り出されました。

 「ペアで、刑事モノで、パートナーの命を自分で奪わなくてはいけない物語をやります」と潮さんが言い出した時には、ああ、この人は本当に自キャラを可哀想にしたいんだなぁと感慨深いものを覚えたものです。

 大事なことなので書き残しておきましょう。
 オルトリヴートの首謀者は潮牡丹さんです。

▼灰壁のフォートヴラッド


 デュエット形式のために、ふたりだけで物語を紡ぐ世界を作ろう。
 それがフォートヴラッドの出発点――の、ひとつでした。
 
 もうひとつの出発点は、ずいぶんと前から共有フォルダに残ったままだった、ヴァンパイアのパートナーと共に、閉鎖都市からの脱出を目指すアクションロールプレイングゲームの企画書。
 
 ――という建前を用意した上で、瀧里は、瀧里の好きなものを詰め込みまくった同人誌を作り始めたのでした。
 
 ステラナイツは潮さんと瀧里が、およそ半分ずつ世界設定を作った作品です。
 そしてオルトリヴートは100%潮さんによる世界。
 なればフォートブラッドは――
 
 瀧里が100%、趣味を突っ込みまくった世界設定というわけです。

 封鎖都市というモチーフには、強い思い入れがあります。
 瀧里が好きな作品をいくつか思い返してみると、封鎖都市が舞台となっている作品がとても多いのですよね……。

 都市はやっぱり封鎖されていて、そこには正体不明の怪物が跋扈していて、それでも人々は、諦めつつも生きていて、そんな中で「守るべきもの」を見つけてしまった主人公がいて――そうあるべきだと思うのです。
 
 都市はどんどん封鎖していこ。物理で。
 ついでに怪物も解き放っていこう。ガチで。
 
 創作活動とは、自分の「好き」を解き放つ必殺技みたいなものだと思います。
 あるいは、隠しきれない「好き」が溢れてしまう、呪術のようなものである可能性も捨てきれませんが……。


 

硝子色


 色の命名をする時は、いつも「花や植物の名前はできるだけ避けよう」という方針で作成しています。
 「琥珀色」が、オレンジでも橙でもないのは、オレンジも橙も果実の名前だからですね。

 で。
 
 硝子色が透明色ではない理由は?
 その答えは、透明であって、透明でない色が良いからでした。
 何もないのではなく、そこに確かにあって、けれど透けて向こうが見えているような、そんなイメージをもたせたかったのです。

 ちなみに、別案は「涙色」でした。

 硝子を選んだのは「作られた存在」というフレーバーを持たせることを優先したからですね。

 スキルのフレーバーはいつもどおり。
 潮さんと瀧里で分担して作っています。
 オルトリヴートとフォートヴラッドの傾向から、どちらが作成したフレーバーなのか、想像するのも楽しいかもしれません。

●4巻の中身はどうなるの?


 ――それは、3巻のデザイナーズノートで教えるわけにはいきません。
 けれど、ステラナイツはすえながーく続くコンテンツだよ! という1巻の時の言葉に嘘はない、ということは重ねてお伝えさせてください。

 ステラナイツは、瀧里やどらこにあんメンバーだけでなく、すべての星の騎士さまや監督さま、観客の皆さまと共に作っている物語です。
 これからも、共に戦っていきましょうね。
 そして世界に宣言してやりましょう。
 
 ――世界ごときに、我々が負けることはないのだと。

瀧里フユ

『星屑のリヴラガーデン』デザイナーズノート:宝井ロメロ

はじめに

 

 ようこそお越しくださいました! そして、初めましての方は初めまして! どらこにあんの宝井ロメロと申します。
 今回は『星屑のリヴラガーデン』において追加された新規スキルや、行われたデータ調整についてこの場をお借りして語らせていただきたいと思います。

リヴラガーデンで実施した調整について

▼偏ったバランスの修正


 ステラナイツは花章と色の組み合わせによってキャラメイクを行う作品です。
 リヴラガーデン以前では、花章はそれぞれ4つのスキルを持ち、そして色は7つのスキル――それに加え、耐久力/防御力/チャージ・ダイス数の3つのスペックが存在しました。


 つまり、データの比重としては圧倒的に色の方が重いゲームであったといえます。

 加えて、花章と色のスキルを比較したとき、運用の核となるような強力なスキルは、どちらかといえば色の方に集中していたことも、比重の偏りを助長してしまう要因の一つでした。


 花章と色にキャラクター性が密接に結びつくステラナイツにおいて、データバランスの偏りはロールプレイの幅を狭める要因となりかねません。
 それは、素敵な物語を生み出す可能性を減らしてしまうことと同義です。

 また、一部のスキルが別のスキルのできることを、より高いレベルで実現してしまっているようなこともありました。


 実を言いますと、それはそれぞれの役割をはっきりとさせるためにあえて用意した要素だったのですが――結果として、それはキャラクター作成時の選択肢を狭めてしまう要因となっていたかもしれません。
 それらを正すべく、リヴラガーデンでは花章スキルの(色スキルに対する)全体的な上方修正と、花章間、色間のスキルバランスの調整を行っています。

▼追加スキルの役割

 各花章と色には「~の戦術」という、データ作成時に想定された戦闘方針があります。
 しかしながら、過去2巻のデータがそれに即したものであったかというと、必ずしもそうではありませんでした。
 サポーターとの記載がありながらサポートスキルが1つしか存在しなかった白色が顕著な例でしょう。


 そのため、リヴラガーデンで追加したスキルの多くは、その花章や色の役割をより強調するようなものとなっています。
 自らを傷つけながら戦うアタッカーであるオダマキには、耐久力が減少することで強力になるアタックスキルを追加し、サポーターとして優秀なコスモスには、唯一触れなかったダイス目操作を追加する――といった具合に、です。


 また、効果こそ面白いがやや扱いにくいスキルの出番を増やすため、それらと相性のいいスキルを追加したりもしています。
 バラの追加スキルである《決闘者の花》はその一例です。

▼効果と情景描写の乖離の是正


 どらこにあんのデータ担当である私がデータ作成時に何より心がけているのは、データとフレーバー(ステラナイツでは情景描写がこれに相当します)がイコールで結ばれるような関係を作ることです。


 リヴラガーデン以前のデータには、情景描写と実際の効果が嚙み合っていないものがいくつか見受けられました。
 具体例をあげますと、「他者に力を分け与える」描写なのに自身にも使えてしまう《生命の図書館》や《慈愛の手》、「移動する」とあるのに自身ではなく他者のみを移動させる《紫縞の裏路地》などが該当します(《紫縞の裏路地》については、《紫縞の回廊》と効果を入れ替えると、名前や描写と合致するということから実施しています)。


 情景描写には、戦闘時のロールプレイを手助けする役割があります。
 ゆえに、この修正は何よりも必要なものでした。
 そのこだわりによって、1巻から2巻までのステラナイツを遊んでくださっていた方々にこそ混乱を生んでしまいましたが、ご理解いただけますと幸いです。

最後に

 

 ステラナイツは超ロールプレイ重視のゲームです。
 だからこそ、取り扱うデータには細心の注意を払う必要がありました。
 なぜなら、データはロールプレイを阻害するノイズではなく、素敵な物語を生むための手助けをするものでなければならないからです。


 それが達成できたことを祈りつつ――このあたりで締めたいと思います。
 ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました!
 次の物語でお会いしましょう!

宝井ロメロ
 

bottom of page