『光砕のリヴァルチャー』デザイナーズノート:瀧里フユ
はじめに
デザイナーズノートって何?
ロールプレイングゲーム界隈ではあまり聞かないこの言葉。
かんたんに言えば、これは『光砕のリヴァルチャー』が、どのように生まれたのか、どういう構造になっているのか、何を表現しようとしたのか、といったデザイナー本人による「超拡大版あとがき」のようなものです。
書籍の中には「遊ぶための情報」が書かれているもので、デザイナーズノートには「読み物としての情報」がまとめられていると言い換えてもいいかもしれません。
ですから、ここから先に「知っておかないとゲームが楽しめなくなる情報」だとか「追加データ」だとか「ルールの補足説明」だとかいった内容は一切書かれていません!
そういう情報は書籍本体にいれるものですからね!!
なのでこれは、読まなくてよいもの、でも瀧里フユとどらこにあんメンバーが何を考えながら『光砕のリヴァルチャー』を書いたのか知りたい方は、きっと楽しめる読み物になっています。
心の準備はよろしいですか?
だいたいいつものコラムとかあとがきとか、Twitterとかの瀧里のノリで進めますよ?
――OK!
ようこそ、もうひとつの灰色の荒野の――舞台裏へ!!
リヴァルチャーは誰のために生まれたゲームか
リヴァルチャーは「機械と人の物語を愛する人」と、
「きっと機械と人の物語を愛してくれる人」と、
「機械という武器を持ったふたりの物語を愛する人」のために生まれたゲームです。
このゲームは、そんな皆さんのために作られました。
もう一歩踏み込むと、瀧里が愛してやまない「人型兵器と、それに乗る人々の関係性」を、きっとそれを愛してくれるだろう未来の仲間に届けるために、生み出されたゲームです。
ですから、あなたがもし既に「機械と人の物語を愛する人」なら、このゲームをきっかけに新しく「機械と人の物語を愛する人」になった仲間を、あふれるばかりの愛でドン引きさせないようにご注意ください。
あなたの好きなものを押し付けるのではなく、まずはこの新たな物語を一緒に遊んでみてくださいね?
リヴァルチャーの構造 ~バトル編~
リヴァルチャーは「バトルが面白いゲーム」としてチューニングされています。
新作タイトルを出す時には「バトルをどこまで面白くするのか?」というのが大事な視点です。
それが戦闘ではなく論争を扱うものであったり、料理の出来栄えを競うものであったり、みんなで強力してちょっと不思議な奇跡を起こすものであっても同じことです。
物語のクライマックスで起きる何らかの事件を解決するシーンを、どこまで「ゲーム的に面白くするのか」というのは、ゲームを作る上で欠かせない視点なのです。
――えっ、ゲームって面白く作るものじゃないの?
というのはごもっとも。
ただ、「面白さ」というのは人によって違うもので、何を面白いと思うのかももちろん違うのです。
よりわかりやすく言い換えるなら、バトルをどこまで複雑にするのか? でしょうか。
ここで注意すべきは、複雑なら面白いというわけではないことです。
面白い要素をどんどん足せば、ゲームの面白さはどんどん増していきます。
その代償として構造は複雑になり、重くなり、遊ぶ人の許容量を超えるゲームに変貌していくのです。
ですから、最初に述べた「バトルをどこまで面白くするのか?」というのは、どれくらい重いゲームにするのかという意味ということです。
今回は明確な目的があったために、複雑で面白いゲームではなく、簡単で面白いゲームを目指す必要がありました(その目的は前述のとおりです!)。
なのでリヴァルチャーの戦闘ルールは、1度遊ぶだけでルールを全部覚えられることを念頭にデザインされています。
具体的には、
★シチュエーションごとのオプションルールを覚えなくていい
ゲームが複雑になるごとに、こういう状況ではこのオプションルールを使って裁定します、という場面が増えていきます。
けれどリヴァルチャーはそういった事態を減らすために、とにかくルール自体を単純にしていきました。
★覚えるデータを減らす
他の人のキャラとのバランスを考えて、自キャラのデータも弱くならないように調整して、それからえっと……。
これはこれで楽しいのですが、リヴァルチャーの目的にはそぐわないので、バトルが楽しめる最低限までデータを削りました。
さらにふたり専用にすることで、他の人のキャラとのバランスを考えるタイミングもなくなっていますね!
★その上で、奥深いゲーム性をもたせる
簡単に遊べることと、奥深いゲームであることは両立できます。
リヴァルチャーを遊んでいるうちに「ああ、こういうことか!」という気付きを得られる瞬間が必ずあるはずです。
――という感じで作られています。
●リヴァルチャーの構造 ~ロールプレイ編~
リヴァルチャーのロールプレイ部分は、シナリオに頼った構造になっています。
ステラナイツのようにシチュエーション表によってロールプレイのきっかけを得ることも可能ですが、どちらかというと「今回の事件や依頼の状況を、ふたりで味わう」ことに重きを置いています。
これはリヴァルチャーの世界が「いつ崩壊してもおかしくない、危険が常に隣り合わせの世界」であることによります。
この崩壊とは文字どおりの意味で、いつどんな瞬間にも、ソラバミという名の滅びが襲来してもおかしくない世界なのです。
そんな世界ですから、人々は生きるために様々な戦いを強いられています。
それを解決できる手段、リヴァルチャーを持つシュヴァリエ、フィアンセのもとには、助けを求める人々が訪れたり、守りたい人々がいたりすることでしょう。
ですから、そんな様々なシチュエーションの中でロールプレイを楽しんでもらうために、「シナリオを好き放題に書けるシステム」を志向しました。
戦闘ルールをしっかり組んであるので、強大なエネミーが登場する理由さえ設定すれば、様々な物語を書いたり、遊んだりすることができます。
もちろん、今後さまざまなシナリオを公式からもリリースしますので、楽しみにしていてくださいね!
(複数のシナリオを連続で遊べる、キャンペーンシナリオというものも準備していますので、お楽しみに!)
設定資料集って?
本作ではかんたんな世界設定の説明を最初に持ってきて、詳しい設定は「設定資料集」という形で分離しました。
――世界設定が面白いなら、それを再現したルールを作れば、それは面白いルールになる。
これは瀧里の持つ面白いゲームを作るためのメソッドですが、そのまま素直に考えると、覚えるべき世界設定がどんどん増えてしまうことにも繋がります。
もちろん、設定はとても面白いもので、皆さまもきっと楽しみにしていてくれると瀧里は信じています。
ただ、布教したり、突発で遊ぶには重いという問題も抱えているのです。
そこでこの世界の誰もが知っていて当然の知識と、歴史や秘密もあわせた本当の世界の姿を完全に分離しました。
この世界で生きる者として、当然知っていることだけを読んでおけば、この世界らしいロールプレイができるように。
そしてシナリオのネタを探したり、この世界をもっと味わいたくなったりした時には、しっかりそれに応えられるように。
最後に ~帰還を切望する~
瀧里には、愛してやまないゲームがいくつもあります。
リプレイのタイトルをどうするか、という相談を潮さんから受けた時、瀧里は「ラブレターにしよう」と提案しました。
私たちが人型兵器を好きになるきっかけを作ってくれた作品に。
私たちが設定とゲーム性が結びついたものは美しいと思うきっかけとなった作品に。
あまたの、大好きな――ずっとファンの皆で首をながーくして待ち続けている作品たちに。
あなた方が紡いだ歴史は、こうしてまたひとつ繋がったのだと届けるために。
『光砕のリヴァルチャー』は、私たちのファンの皆さまと、私たちが創作の道へ踏み出したきっかけを創った先輩クリエイターの皆さまへのラブレターなのです。
「人型兵器と、それにまつわる関係性」という脈々と受け継がれてきた物語と、このラブレターを受け取ってくださった皆さんが、本作をめいっぱい楽しんでいただけなら、瀧里はとてもうれしく思います。
――それでは、一緒に灰色の荒野へ参りましょう!
瀧里フユ
『光砕のリヴァルチャー』デザイナーズノート:宝井ロメロ
はじめに
ようこそお越しくださいました! どらこにあんの宝井ロメロと申します。
今回は、データデザインを担当させていただいた『光砕のリヴァルチャー』について、掲載データの作成意図・経緯や、おすすめの運用方法などを語らせていただきます。
なお、あくまで「おすすめ」であるため、作成に迷った際の道しるべ程度にお考え下さい。
どの組み合わせでも遊べるのが、『光砕のリヴァルチャー』ですから!
では、稚拙な文章で恐縮ですが、どうぞお付き合いくださいませ。
※デザイナーズノートの公開意図につきましては、先にフユさんの「はじめに」を読んでいただければ幸いです。
フレーム編
『光砕のリヴァルチャー』において、ロボット本体を表す「フレーム」は、3タイプの脚部――「二脚」「逆関節」「四脚」に区分されます。
最もオーソドックスなタイプである二脚はさておき、なぜ残りのふたつが逆関節と四脚なのかといいますと――フユさんの好物だからです、はい。
当初、過去作『エアゲトラム』同様、「軽量二脚」や「重量逆関節」といった、脚部タイプを重量ごとに細分化する案もありましたが、最終的に「装甲のクロニクル」による表現へと変更されました。
★おすすめ運用:二脚
バランスの取れた脚部で、その中でもエネルギー効率に優れます。
どのウェポンを用いても活躍できますが、強いて言うのであれば【グッドツール】の性能から、判定ダイス数の少ないウェポンが特に相性がいいでしょう。
総じて扱いやすい、初心者向けのカテゴリーです。
★おすすめ運用:逆関節
機動力に優れた脚部で、「ブレード」との相性は抜群です。
他の脚部に比べやや脆い傾向にありますが、それは『光砕のリヴァルチャー』において有利に働く事もあります。
シールド破壊によって得たジアドエネルギーを攻撃に回し、「やられる前にやる」の精神でガンガン行きましょう!
★おすすめ運用:四脚
頑丈なシールドと、【エイムスタンス】による強力な攻撃補正を持つ脚部です。
フレーバーからも読み取れるように、「キャノン」との相性に特に優れます。
機動力とエネルギー効率にやや難があるため、「ブレード」の運用には慎重さが求められます。
ウェポン編
『光砕のリヴァルチャー』には、「ロングライフル」「ショートライフル」「マシンガン」「キャノン」「ブレード」の計5種のウェポンカテゴリーが存在します。
本作においての操縦士が騎士モチーフであることから「ブレード」が最も早くに作られたカテゴリーでした。
また、バランス調整が最も難航したのも「ブレード」だったりします。
★おすすめ運用:ロングライフル
抜群の安定感を誇る、初心者向けのウェポンカテゴリーです。
威力、射程、消費エネルギーなど全てのバランスに優れており、これを持っていけば間違いはありません。
一方、いわゆる「上振れ」が起こりにくいウェポンでもありますので、物足りなく感じてきたら他のウェポンも試してみてください!
★おすすめ運用:ショートライフル
最小のエネルギーで使用できるウェポンカテゴリーです。
エネルギー消費の大きいウェポンの穴埋め的な役割にはうってつけで、いぶし銀的な活躍が見込めます。
メインウェポンとして用いるには威力も射程も足りませんが、そこはアビリティなどでカバーしましょう!
★おすすめ運用:マシンガン
判定ダイスの多さと、それによる爆発力に優れたウェポンカテゴリーです。
アビリティによる恩恵を受けやすい点も魅力的で、組み合わせ次第でさらに化けます。
目標値を高く設定するためのハードルがやや高く、射程も比較的短めですので、どちらかといえば戦闘に慣れたシュヴァリエ向きでしょう。
★おすすめ運用:キャノン
最も長い射程距離と、高い威力を併せ持つウェポンカテゴリーです。
射程の長さは自身のムーヴ回数を減らすことに結びつくため、そのエネルギーを攻撃に充てることができます。
小回りの利かなさが明確な弱点と言えるウェポンですので、そこを埋められる低燃費な武装と同時運用するようにしましょう。
★おすすめ運用:ブレード
本作の華であり、象徴とも呼べる強力なウェポンカテゴリーです。
その威力はムーヴ性能に大きく左右されますので、ムーヴ距離の長いフレームを選びましょう。
また、ダイス目を操作するアビリティは良い相棒となるはずです。
クロニクル編
いかにデータ量を抑えつつ、機体のバリエーションを増やすか――その課題をクリアする事に大きく貢献してくれた項目です。
「装甲のクロニクル」「戦場のクロニクル」「装備のクロニクル」「フォートレスのクロニクル」「ふたりのクロニクル」の計5種のカテゴリーが存在しますが、同一カテゴリー内のデータ的な役割は(装甲のクロニクルを除いて)多種多様です。
クロニクルの存在が『光砕のリヴァルチャー』と過去作(エアゲトラムやアヴァンドナー)との最も大きな違いと言えるでしょう。
★おすすめ運用:クロニクル
「装甲のクロニクル」は、フレームの性能を大きく変更してしまうカテゴリーです。
そのため、一度選択したことのあるフレームに適用することをおすすめします。
同じフレームなのに全く違う性能――その変化を楽しんでください。
「戦場のクロニクル」で選択できるクロニクルは、どれも強力かつ、扱いやすいです。
そして何より、リヴァルチャーやシュヴァリエに格好いい背景を持たせる事が出来ます!
クロニクルに迷ったら、ここから一つ選ぶと良いでしょう。
「装備のクロニクル」には、『光砕のリヴァルチャー』の戦闘において最も重要である移動を、アビリティによって強化するものが多いです。
作成済み機体である高機動型「シュライク」のように長所を伸ばすもよし、砲撃型「ラップウィング」のように弱点を補うのもよし、です。
「フォートレスのクロニクル」は「戦場のクロニクル」と近いデータが用意されていますが、その効果はやや限定的です。
その分切り札感は一番ですので、ここぞというときに使いましょう。
「ふたりのクロニクル」は特殊な効果を持つものが多く、やや扱いにくいかもしれません。
ですが、それに備わった設定やストーリーは本作のテーマに最も即したものであり、他のクロニクルとは違った意味での盛り上がりを約束してくれます!
最後に
フユさんと潮さんが作ってくださった素敵な世界観――それにふさわしい、楽しいデータを作れたと自負しておりますが、皆さまもそのように感じて下さったのなら、それが何よりの喜びです。
そしてもし、データや関連する要素について「あれほしい!」「こんなのどう?」といった要望やアイデアがある方は遠慮なくじゃんじゃん発信してください!
次回作の参考にさせていただく――かもしれませんので!
――それでは、灰色の荒野でお会いしましょう!
宝井ロメロ